オフィス半減や、「ジョブ型」への移行など思い切った社内改革を断行する富士通については【ジョブ型への移行、オフィス半減 富士通・平松常務に聞く「真のDX企業へと脱皮する要点】でレポートした。今回は、IT企業として激化するグローバル競争に勝ち抜くための同社やソニー、NECなどが人材獲得のために何をしようとしているのか、将来課題についてお届けする。
IT企業の人材獲得競争は数年前から熾烈(しれつ)を極めている。特にAI(人工知能)技術の各方面での応用が指摘されるようになってからは、AI技術者、データサイエンティストと呼ばれるビッグデータを分析できる人材、ソフトやハード機器のセキュリティに詳しい人材などが引っ張りだことなった。こうした人材は、数千万円の年収を払ってでも獲得しようとする企業が続々と出てきて、国内大手のIT企業は「優秀な人材をライバル企業に引き抜かれるのではないか」と戦々恐々といている。
新卒、中途を含めて優秀な人材を採用することに加え、リテンションといわれる人材の維持、つまり採用した人材を自社にいかにして引き留めるかも課題となっている。2年ほど前から、NEC、ソニー、NTTコミュニケーションズといったIT企業は、一般社員の給与体系とは異なる制度を設けて人材獲得に力を入れるようになった。ソニーなどはこうした制度をさらにレベルアップして、国籍に関係なくグローバルな視点から人材を求めようとしている。
19年10月に新卒社員への高給待遇で話題になったのがNECだ。大学時代の論文が高い評価を得た新卒者の研究職を対象に、年収が1000万円を超える可能性がある「選択制研究職プロフェッショナル制度」を導入した。これまでの一般社員とはまったく異なる厚待遇で、技術・研究系の職場に衝撃を与えた。同社に聞くと、現在6人がこの制度の適用を受けていて、今後も増やしていくという。
NTTコミュニケーションズは19年7月から「アドバンスト・スペシャリスト」という制度を導入した。ソフトウェアエンジニアやデータサイエンティストなど即戦力の人材を3年以内に100〜200人採用する方針で、最高ランクは年俸で3000万円になる可能性がある。19年度にはこの制度によって約30人を新規で採用した。
ソニーは世界トップレベルの研究者を獲得し、テクノロジーの力を新たな価値創造につなげようとしている。AIやロボティックス領域などで極めて高度な技術的専門性や顕著な実績を有する社員を対象に、年収1100万円以上(上限額を設けず、専門性の高さと市場価値に応じて個別に決定)を支払う「エクセプショナル・リサーチャー」(XR)制度を導入した。この制度により、AIをはじめとした特定の技術領域における人材の獲得競争が激化している中で、トップレベルの技術者を確保しようとしている。
世界中に研究開発(R&D)の拠点があるソニーは、欧州、米国、中国に加え、2020年7月にインドにも拠点を開設した。こうした世界中の研究拠点との人材ローテーションにも今後ますます注力し、社員の育成にも多様性を取り入れていくという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.