――私も信頼関係を結ぶことは非常に重要だと思います。一方で、日本の雇用慣行の中では信頼関係を構築するのが難しいという現実もあります。マネジャーと部下はいかにして信頼関係を結ぶことができるのでしょうか?
上司と部下が信頼関係を構築することは、日本に限らず全世界でも課題だと思います。なぜなら信頼関係というものは訓練によって構築することができないからです。信頼関係を作るためのトレーニングプログラムは存在しません。
一般的に、信頼関係を構築するには7〜8カ月ほど掛かるといわれていますが、崩れるのは一瞬です。信頼関係をコントロールしようとするのは難しく、一歩一歩、構築していかざるを得ないのです。
信頼の要素として「reliability(確実性)」という考え方があります。上司が求めたものを毎回きちんと成し遂げることや、約束を果たすこと、ミスをしてしまったときにそのことを取り戻そうと努力することによって信頼が築けるのです。
だからマネジャーは、部下とのコミュニケーションの手段をきちんと持つことが重要でしょう。部下が何に困っているのか、何を必要としているのかを把握する必要があります。部下へのフィードバックの時間を定期的に持つといったコミュニケーションの取り方が望ましいでしょう。繰り返しますが、信頼関係は毎日少しずつの習慣で築いていくものです。大きなイベントによって一気に築けるものではありません。
――日本では、「最近の若い奴は」という発言が役員会などでよく出てくると聞きます。本来、マネジャーは部下を育てるために存在するはずですが、どうすればこのような状況を変えることができるのでしょうか?
マネジャーが部下のことに関心を持っていないとしたら、それは問題です。ABWをどうするか以前に、こうしたそもそもの価値観や考え方を変えないと、日本の働き方は変わらないように思われます。
ただ、「最近の若い奴は」という発言は日本だけでなく、実は海外でも昔から繰り返しされています。こうした問題を解決するために必要なのは、世代を超えてオープンに議論することではないでしょうか。
2週間前シンガポールでこんなことがありました。ミレニアル世代を集めたシンポジウムに参加したとき、彼らが普段の生活の中で何を大切にしているのかを話していました。するとミレニアル世代が大切にしているものは「家族」だったのです。一方もっと上の世代は、ミレニアル世代に対して、「あいつらは働いていない」「いつも携帯電話を触ってゲームをしている」といった固定観念を持ってました。
ですが、よく話を聞いてみると、ミレニアル世代も上の世代と同じように、家族との暮らしを大切にしていたり、自分たちの親を誇りに思っていたりという「共通点」があったのです。また、彼らが携帯電話を触っているのも単にゲームをしているわけではなく、Facebookで顧客の情報を見てマーケティングをしていたり、営業をしやすくしようとしていたり、仕事のツールとして使っていることも分かりました。
このように、議論をすることで、スマートフォンを使って遊んでいるという思い込みも払拭されたのです。オープンな会話をしていないと、ディスコミュニケーションや意見の食い違いが起こります。議論をして、「親を大切にする」など、価値観の共通点を築いていくことが大事なのです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
続きを読むには、コメントの利用規約に同意し「アイティメディアID」および「ITmedia ビジネスオンライン通信」の登録が必要です